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CFO採用でよくある5つの失敗——採用前に決める3つのこと

「CFOの役割とは——仕事内容と経理部長との違い・機能の持ち方」の記事では、CFO機能を持つ選択肢として「採用・育成・外部活用」の3つを挙げました。本記事ではそのうち「採用」を深掘りします。

最初にお伝えしたいのは、CFOの採用そのものは有力な選択肢だ、ということです。事業の規模と複雑さが一定を超えた企業にとって、専任CFOの存在は大きな武器になります。ただ、私がCFO支援の現場でご相談を受ける中には、「CFOを採用したが、期待どおりに機能しなかった」というケースが少なからずあります。そして、その失敗の多くは、候補者の能力の問題ではなく、採用の前段階の準備で決まっています。

本記事では、私が見てきたCFO採用の失敗パターンを5つに整理し、ミスマッチを防ぐために「採用前」に決めておくべきことをまとめます。これからCFO採用を検討する経営者の方の参考になれば幸いです。

なぜCFO採用は難しいのか

そもそもCFO採用は、他のポジションと比べて構造的に難しい採用です。理由は3つあります。

第一に、候補者の母集団が小さいこと。CFO経験者自体が少なく、さらに自社の事業フェーズに合う人となると、選択肢は限られます。

第二に、採用する側が役割を定義しづらいこと。社内にCFO経験者がいない場合、「良いCFO」を見極める物差しが社内に存在しません。面接で何を確認すべきかが分からないまま、経歴の印象で判断せざるを得なくなります。

第三に、成果が見えるまでに時間がかかること。営業のように数字で即座に測れる職種ではないため、入社後の評価軸が曖昧なまま、期待とのズレが静かに広がっていきます。

この3つの難しさを前提に、具体的な失敗パターンを見ていきます。

1 「何を任せるか」を決めずに採用する 2 肩書と経歴の印象だけで選ぶ 3 「経理部長の上位互換」として迎える 4 受け入れ体制がないまま孤立させる 5 評価軸がなく、期待のズレが放置される

図1:CFO採用でよくある5つの失敗パターン

失敗①:「何を任せるか」を決めずに採用する

最も多いパターンです。「CFO」という言葉のイメージ——資金調達に強い、上場を経験している、経営参謀になってくれる——だけが先行し、自社で具体的に何を任せるのかが定義されないまま採用が進みます。

「CFOの役割とは」の記事で書いたとおり、CFOの役割は「経営の可視化」「資金の確保」「経営判断への関与」「仕組みと体制づくり」の4つに分かれます。どれを最優先で任せたいかによって、選ぶべき人はまったく違います。調達に強い人が管理会計の整備も得意とは限りませんし、その逆もまた然りです。

防ぎ方:求人票を書く前に、4つの役割のどこを、どの優先順位で任せるかを言語化することです。「全部」は定義したことになりません。最初の1年で最も解決したい課題をひとつに絞ると、求める人物像は自然と具体的になります。

失敗②:肩書と経歴の印象だけで選ぶ

「大手企業の財務部門出身」「上場企業のCFO経験者」——輝かしい経歴は魅力的に映ります。ただ、私が強調したいのは、これは能力の問題ではなくフェーズの相性の問題だ、ということです。

整った仕組みの中で専門領域を深く担当してきた方と、仕組みがない環境でゼロから作ってきた方とでは、力を発揮できる環境が違います。中小企業のCFOには、資料作成もデータ集計も自分で手を動かし、限られたリソースで優先順位を決める働き方が求められます。大きな組織で成果を出してきた方ほど、この環境の違いに苦労するケースを私は見てきました。

経歴が積まれた環境(例) 整った仕組みの中で専門領域を担当 実務は部下や外部専門家に任せられる 予算も人員も揃っている ≠ 中小企業で求められる環境 仕組みをゼロから作る 自分で手を動かす場面が多い 限られたリソースで優先順位を決める

図2:能力の問題ではなく「フェーズの相性」の問題

防ぎ方:経歴の華やかさではなく、「自社と近いフェーズ・近い規模の環境で、ゼロから何かを作った経験があるか」を確認することです。面接では実績の結果ではなく、「その環境で最初の3ヶ月に何をしたか」というプロセスを聞くと、フェーズの相性が見えやすくなります。

失敗③:「経理部長の上位互換」として迎える

経理(過去の記録)とCFO(未来の意思決定)は別の役割です(詳しくは「CFOの役割とは」の記事をご覧ください)。ここを混同したまま採用すると、双方にとって不幸なことになります。

よくあるのは、決算や税務の実務を固めてほしいという期待でCFOを採用し、入社した本人は財務戦略や経営への関与を期待していた、というすれ違いです。逆に、経理実務の責任者が欲しかっただけなら、CFOではなく経理部長の採用が正解だった、というケースもあります。

防ぎ方:自社が欲しいのは「過去を正確に締める人」なのか「未来の数字を作る人」なのかを、採用の入口で明確にすることです。両方を一人に求めるのは、前回も書いたとおり、どちらも中途半端になりやすい頼み方です。

失敗④:受け入れ体制がないまま孤立させる

優秀なCFOを迎えても、データが散在し、経理がブラックボックスで、社内に協力者がいない状態では、力を発揮するまでに長い時間がかかります。入社後しばらく「数字を集めて整理するだけ」の期間が続き、経営者は「期待していた戦略の話が出てこない」と感じ、本人は「そもそも材料がない」と感じる——このすれ違いは、体制の問題であって人の問題ではありません。

防ぎ方:採用前に、最低限の材料(月次決算の状態、主要データの所在、各部門との連携ルート)を棚卸ししておくことです。散らかっていること自体は構いません。「何がどこまでできていて、何がないか」を入社初日に共有できるだけで、立ち上がりは大きく変わります。この棚卸しには、経営管理体制チェックリスト(約3分・無料)もご活用いただけます。

失敗⑤:評価軸がなく、期待のズレが放置される

CFOの仕事は成果が見えるまで時間がかかります。評価軸を決めずに迎えると、経営者側の「何かが違う」という違和感と、本人の「評価されていない」という不満が、言語化されないまま蓄積していきます。気づいたときには信頼関係が損なわれていて、退職に至る——これが典型的な結末です。

防ぎ方:入社前に「最初の半年のミッション」を合意しておくことです。たとえば「月次決算を締め後◯営業日に短縮する」「予実管理の月次サイクルを回し始める」「資金繰り予測を13週で見える化する」など、具体的な成果物のかたちで定義します。半年後にこのミッションを一緒に振り返る場を、採用時点で予定に入れておくのが理想です。

採用を成功させるために——「採用前」に決める3つのこと

5つの失敗パターンには共通点があります。いずれも、採用活動が始まる前の準備で防げるということです。整理すると、採用前に決めるべきことは次の3つに集約されます。

1 任せる役割の優先順位 CFOの4つの役割のうち 最初の1年でどこを任せるか 2 最初の半年のミッション 具体的な成果物のかたちで 定義し、振り返る場も決める 3 社長との役割分担 どこまで任せ、何は社長が 決めるのか、線を引いておく

図3:採用活動を始める前に決めておく3つのこと

3つ目の「社長との役割分担」について補足します。CFOは経営の参謀ですが、最終的な意思決定者は社長です。「数字に基づく選択肢と推奨案はCFOが出す、決めるのは社長」——この線引きが曖昧だと、CFOが決めすぎて社長が不満を持つか、社長が全部決めてCFOが提案をやめるか、どちらかに転びがちです。

✔ ポイント

この3つを決める作業は、そのまま「自社に本当に専任CFOが必要か」の検証にもなります。任せたい役割を書き出してみたら、実は可視化と仕組みづくりが大半で、フルタイムの専任者でなくても回せそうだ——と分かることもあります。逆に、調達や資本政策まで含めて専任が必要だと確信できれば、迷いなく採用に進めます。

採用が「まだ早い」と感じたら

3つを決める過程で「専任を雇うほどの業務量ではない」「まず仕組みを作るのが先だ」と感じた場合は、「CFOの役割とは」の記事で書いた段階論——外部の力を借りてCFO機能を立ち上げ、型ができてから専任採用を検討する——も選択肢になります。先に仕組みと月次の型ができていれば、いざ採用する際の受け入れ体制(失敗④の防止策)も同時に整っているという利点もあります。

当社のコムレイド経営企画部は、この段階論の入口となる「外部でCFO機能を立ち上げ、仕組みを社内に残す」部分を月額制で提供するサービスです。CFOクラスのプロが伴走し、専任採用に進む際の土台づくりまでを担います。

まとめ

  1. CFO採用の失敗の多くは、候補者の能力ではなく「採用前の準備」で決まる
  2. 5つの失敗パターン——役割の未定義・経歴だけの選考・経理部長との混同・受け入れ体制の不在・評価軸の不在——はすべて事前に防げる
  3. 採用前に「任せる役割の優先順位」「最初の半年のミッション」「社長との役割分担」の3つを決める
  4. 決める過程で「まだ専任は早い」と分かったら、外部活用から始める段階論も選択肢

当社の経営管理 無料診断(60分・オンライン)では、CFO業務の実務経験を持つメンバーが、貴社に必要なCFO機能の整理をお手伝いしています。「採用の前に、何を任せるべきかを整理したい」という段階のご相談も歓迎です。また、経営管理の現在地は経営管理体制チェックリスト(約3分・無料)でセルフチェックいただけます。


執筆:コムレイドコンサルティング合同会社 代表社員 千葉 学(CFO・FP&A支援)

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