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資金繰り表の作り方——5ステップで始める、続けられる資金管理

「資金繰りは、だいたい頭の中で分かっている」——経営者の方からよく伺う言葉です。実際、肌感覚で資金を把握している経営者は少なくありません。ただ、その把握が「表」になっているかどうかで、資金の余裕がなくなったときの対応スピードはまったく変わります。

利益が出ているのに資金が足りなくなる——いわゆる黒字倒産という言葉があるとおり、損益と資金は別物です。本記事では、CFOの4つの役割のうち「資金の確保」の土台となる資金繰り表について、初めて作る方向けに、構造と作り方、そして続けるコツを解説します。

なぜ損益計算書だけでは足りないのか

最初に押さえたいのは、損益計算書(P/L)と資金繰りは、同じお金を違うルールで見ているということです。

損益の世界では、売上は「計上した月」に立ちます。しかし資金の世界では、入金があるのは回収サイトが経過した後——たとえば月末締め翌々月末払いなら、売上計上から入金まで約2ヶ月のズレがあります。その間も、仕入代金や給与の支払いは先にやってきます。事業が成長して売上が増えるほど、立て替えている資金も増える——「儲かっているのに資金が減る」のは、多くの場合この構造が原因です。

損益(利益)の世界 売上は「計上した月」に立つ 減価償却は費用になる 借入金の返済は費用にならない 資金(キャッシュ)の世界 入金は回収サイトの経過後 減価償却で資金は減らない 借入金の返済で資金は減る

図1:同じお金でも、損益と資金ではルールが違う

このズレを埋めるのが資金繰り表です。「いつ・いくら入って、いつ・いくら出ていき、月末にいくら残るか」を、未来に向かって並べた表——それだけのものですが、これがあるだけで資金の議論は感覚から事実に変わります。

資金繰り表の基本構造

資金繰り表の構造はシンプルです。前月から繰り越した資金に、当月の収入を足し、当月の支出を引くと、翌月に繰り越す資金が出る。これを月ごとに横に並べるだけです。

前月繰越 + 当月の収入 − 当月の支出 = 翌月繰越 現金売上・売掛金の回収 借入・その他入金 仕入・人件費・経費 借入返済・税金・社会保険料 ここが細る月を 早く見つけるのが目的

図2:資金繰り表の基本構造

会計の教科書には経常収支・設備収支・財務収支という区分も出てきますが、初めて作る段階では、この「繰越+収入−支出」の形で十分です。大事なのは区分の正しさではなく、翌月繰越が細っていく月を、できるだけ早く見つけることです。

資金繰り表を作る5ステップ

実際の作成手順です。エクセルやスプレッドシートで十分作れます。

STEP 1 現預金残高を 把握する STEP 2 収入の予定を 並べる STEP 3 支出の予定を 並べる STEP 4 6ヶ月先まで 伸ばす STEP 5 更新の運用を 決める 決めた頻度で更新し続ける

図3:資金繰り表を作る5ステップ

STEP 1:現預金残高を把握する

すべての銀行口座と現金の残高を一覧にし、合計を出します。口座が多い会社ほど、この時点で「実は全体をひと目で見られる場所がなかった」ことに気づきます。ここが資金繰り表の起点(前月繰越)になります。

STEP 2:収入の予定を並べる

月ごとの入金予定を書き出します。ポイントは、売上の計上月ではなく入金月で書くことです。取引先ごとに回収サイト(締め日と支払日)が違う場合は、主要な取引先だけでもサイトを反映させます。細かい取引は「その他」でまとめて構いません。

STEP 3:支出の予定を並べる

同様に、支払月ベースで書き出します。毎月ほぼ一定の固定費(家賃・給与など)、売上に連動する変動費(仕入・外注費など)に加えて、忘れやすいのが毎月は発生しない支出です。賞与とそれに伴う社会保険料、納税(法人税・消費税の中間・確定)、設備投資などの臨時の支出——資金繰りを狂わせるのは、たいていこの「たまにやってくる大きな支払い」です。年間の支払いカレンダーを一度作っておくと、抜けが大きく減ります。

STEP 4:6ヶ月先まで伸ばす

同じ要領で、6ヶ月先まで月を伸ばします。未来の数字は概算で構いません。目的は円単位の正確さではなく、「翌月繰越が細る月がいつ来るか」を早く知ることです。資金に不安がある局面では、月次ではなく週単位で13週先まで見る「13週資金繰り表」に切り替えると、解像度が上がります(詳しくは「13週資金繰り表の作り方」で解説しています)。

STEP 5:更新の運用を決める

資金繰り表は、作ること自体より更新され続けることに価値があります。「誰が・いつ・何を見て更新するか」——たとえば「経理担当が毎月第3営業日に、通帳と会計データを見て更新する」——まで決めて、初めて完成です。

✔ ポイント

最初から精緻な表を目指さないでください。科目を細かく分け、全取引先のサイトを反映した表は、立派に見えて更新が続きません。予実管理の記事でも書いたとおり、粗くても毎月回るほうが、精緻で止まっているより価値があります。まず「主要な入出金+月末残高」だけの粗い表を3ヶ月続けることを目標にしてください。

なお、資金繰りを含む経営管理の現在地は、経営管理体制チェックリスト(約3分・無料)でセルフチェックできます。

運用でよくある2つのつまずき

つまずき①:予定どおりに入金されない前提がない

資金繰り表を作ると、つい「予定どおり入金される」前提で安心してしまいます。しかし実務では、入金の遅れは珍しくありません。主要な入金については「1ヶ月遅れたら月末残高がどうなるか」を一度見ておくと、どの取引先の遅延が致命的かが分かり、請求・回収の管理に優先順位がつきます。

つまずき②:いつの間にか更新されなくなる

作った直後は皆が見るのに、数ヶ月で更新が止まる——これは意思の問題ではなく、仕組みの問題です。対策は2つ。①更新の担当と期日を固定すること(STEP 5)、②経営会議の定例アジェンダに「資金繰り」を1項目入れて、表が毎月必ず使われる場を作ることです。使われる表は、自然と更新され続けます。

まとめ

  1. 損益と資金はルールが違う。そのズレを埋めるのが資金繰り表
  2. 構造は「前月繰越+収入−支出=翌月繰越」だけ。目的は繰越が細る月を早く見つけること
  3. 作成は5ステップ。収入は入金月ベース、支出は「たまに来る大きな支払い」の抜けに注意
  4. 精緻さより継続。粗い表を毎月更新し、経営会議で使われる状態を作る

貴社の資金繰り管理が「表」になっているか、感覚のままかは、経営管理体制チェックリスト(約3分・無料)の診断観点のひとつです。また、当社のコムレイド経営企画部は、資金繰りの見える化を含む経営管理の仕組みづくりに、CFOクラスのプロが伴走するサービスです。経営管理 無料診断(60分・オンライン)では、貴社の入出金の構造に合わせた資金繰り表の設計と運用の型づくりをお手伝いしています。資金繰りの見える化に着手したい方は、お気軽にご相談ください。


執筆:コムレイドコンサルティング合同会社 代表社員 千葉 学(CFO・FP&A支援)

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