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月次決算の早期化——締め後5営業日で数字を出す方法

「先月の数字が出てくるのは、翌月の末になってからです」——このご相談は本当に多く、「経営企画部の立ち上げで最初につまずく5つのこと」の1つ目に挙げた「数字が集まらない」問題の、経理側の顔でもあります。

月次の数字が遅いと、影響はドミノ式に広がります。予実管理は「先々月の話」になり、経営会議は鮮度のない報告会になり、資金繰りの予測も後手に回る。当ブログのほぼすべての記事で「締め後◯営業日で数字を出す」という前提を置いてきましたが、今回はその土台——月次決算の早期化そのものを取り上げます。

前提:経営に使う数字は「精度」より「鮮度」

最初に、考え方をひとつ切り替える必要があります。月次決算の目的は、税務申告のような正確な計算ではなく、経営判断の材料を出すことです。

1円まで合った翌月末の数字と、概ね正しい5営業日後の数字——経営判断に役立つのは、ほとんどの場合、後者です。打ち手がほぼ1ヶ月早まることの価値は、端数の精度よりはるかに大きい。この割り切りができるかどうかが、早期化の出発点になります(もちろん、年次決算や税務は正確に行う前提です。月次と年次で目的が違う、という整理です)。

月次決算が遅くなる4つの原因

私が現場で見てきた「遅さ」の原因は、ほぼ次の4つに集約されます。

1 請求書待ち——取引先からの請求書が揃うまで締められない 2 手作業の転記・突合——システム間をエクセルでつないでいる 3 締め処理の属人化——手順が担当者の頭の中にしかない 4 完璧主義——1円まで合わせてからでないと出せない

図1:月次決算が遅くなる4つの原因

このうち最大の要因は、多くの会社で①の請求書待ちです。取引先からの請求書は月初10日頃まで届き続けるため、「全部揃ってから締める」運用では、構造的に10日より早くなりません。ここを崩す鍵が、次に述べる概算計上です。

なお、月次決算のスピードを含む経営管理の現在地は、経営管理体制チェックリスト(約3分・無料)で確認できます。

早期化の4つの打ち手

打ち手①:概算計上で「請求書待ち」をやめる

請求書が届いていない費用は、発注書・契約・前月実績などをもとに概算で計上し、締めてしまいます。実額が判明したら翌月に差額を調整する——これだけで、締めのボトルネックの多くが解消します。毎月ほぼ定額の費用(家賃・顧問料・サブスクリプション等)は、そもそも請求書を待つ必要がありません。

打ち手②:締めスケジュールを「日別」に固定する

「なるべく早く締める」では早くなりません。締め後の作業を日別に割り付け、毎月同じカレンダーで回します。

1営業日目 現預金・売上高 の確定 2営業日目 費用の計上 (概算を含む) 3営業日目 部門別集計と 整合チェック 4営業日目 月次レポート の作成 5営業日目 経営陣へ提出・ 経営会議へ ※日程の刻み方は一例。自社に合わせて設計し、毎月同じカレンダーで固定することが重要

図2:締め後5営業日スケジュールの例

あわせて、社内側の締切も前倒しします。経費精算や部門からの報告の締切が「月末」のままだと、月初の処理が渋滞します。経費精算は月末の数営業日前に締める、といった社内ルールの見直しも、地味ですが効きます。

打ち手③:手作業の転記をなくし、手順を文書化する

販売データや銀行明細を会計ソフトへ手で転記しているなら、データ連携(銀行口座やカードの自動取込、販売システムからのインポート)に置き換えます。あわせて締め手順を日別のチェックリストとして文書化しておくと、属人化(原因③)の解消と作業の抜け防止を兼ねられます。

打ち手④:「速報値→確定値」の2段階で出す

完璧主義(原因④)への処方箋です。締め後5営業日で出すのは速報値と割り切り、経営会議はこれで回します。実額との差分は翌月の確定値で調整し、大きな差があったときだけ報告する——この2段階運用にすれば、精度への不安と鮮度を両立できます。

月末締め 概算計上を活用 速報値(5営業日) 経営判断はこれで動く 経営会議・予実 鮮度のある議論 確定値(実額判明後) 概算との差額を調整 差分が大きいときだけ 翌月に報告する

図3:速報値→確定値の2段階運用——精度の不安と鮮度を両立する

速報値で出した数字は、そのまま「はじめての予実管理」の月次サイクルに載り、「経営会議の進め方」で書いた1枚目の着地見込みサマリーの鮮度を支えます。月次の早さは、それ自体が目的ではなく、経営管理全体の回転速度を決める土台です。

進め方:現状を測り、1日ずつ縮める

早期化は一気には進みません。現実的な進め方は次のとおりです。

  1. 現状を測る——先月の数字が経営陣に届いたのは締め後何営業日目だったか。まずこの1つの数字を記録します
  2. ボトルネックを特定する——日別に「何を待っていたか」を書き出すと、遅れの原因(図1のどれか)が特定できます
  3. 1〜2日ずつ縮める——概算計上の対象を広げる、社内締切を前倒す、転記を1つ自動化する。毎月ひとつ改善し、数ヶ月かけて目標に近づけます

目標の目安は締め後5営業日ですが、現在翌月末までかかっているなら、まず締め後15営業日(約3週間)にするだけでも経営の景色は変わります。

✔ ポイント

早期化を経理担当への「もっと早く」という号令で進めると、負荷だけが増えて失敗します。概算計上のルール・社内締切の前倒し・速報値という位置づけ——いずれも経営側が決めるべき仕組みの変更です。経理の頑張りではなく仕組みで早くする、という順番を間違えないでください。属人化の解消も含め、考え方は経営企画部の立ち上げで最初につまずく5つのことで書いた「人ではなく仕組み」と同じです。

まとめ

  1. 月次決算の目的は経営判断の材料。精度より鮮度——概ね正しい5営業日後が、正確な翌月末に勝つ
  2. 遅さの原因は「請求書待ち・手作業・属人化・完璧主義」の4つ
  3. 打ち手は、概算計上・日別スケジュールの固定・転記の自動化と手順の文書化・速報値と確定値の2段階運用
  4. 進め方は「現状を測る→ボトルネック特定→毎月1〜2日ずつ縮める」。目安は締め後5営業日

月次決算のスピードを含む経営管理の現在地は、経営管理体制チェックリスト(約3分・無料)で確認いただけます。なお、記帳や締めの実務そのものの代行は当社の業務範囲外ですが、当社のコムレイド経営企画部は、その先——出てきた速報値を経営判断に活かす仕組み(月次レポートの型、予実管理と経営会議のサイクル)の構築を、CFO・経営企画のプロが伴走してご支援するサービスです。経営管理 無料診断(60分・オンライン)では、貴社の月次の数字の流れを伺い、課題の言語化と改善の優先順位づけをお手伝いしていますので、「月次が遅くて経営に使えない」とお悩みの方はお気軽にご相談ください。


執筆:コムレイドコンサルティング合同会社 代表社員 千葉 学(CFO・FP&A支援)

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