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経営企画部の立ち上げで最初につまずく5つのこと——現場で見てきた乗り越え方

「経営企画部を立ち上げたものの、何から手をつければいいのか分からない」——私がご支援の現場で最もよく伺う悩みのひとつです。

経営企画部(あるいは経営管理部)は、多くの中小・中堅企業で「一人目の担当者」からスタートします。経理と兼任だったり、社長の右腕役が兼務していたり、形は様々ですが、つまずくポイントは驚くほど共通しています。

本記事では、私がCFO・FP&A支援の現場で繰り返し見てきた「経営企画部が最初につまること」を5つに整理し、それぞれの乗り越え方を考えます。これから経営企画機能を立ち上げる方、立ち上げたものの手応えがない方の参考になれば幸いです。

1 数字が「集まらない・揃わない」うちに月が終わる 2 予算が「作って終わり」になり、予実管理が形骸化する 3 経営会議が「報告会」になる 4 KPIの「定義」が人によってずれる 5 すべてが「一人」に載る(属人化)

図1:経営企画部の立ち上げ期に共通する5つのつまずき

つまずき①:数字が「集まらない・揃わない」うちに月が終わる

最初のつまずきは、分析以前の段階で起こります。

まず、そもそも数字が集まらないという問題があります。現場からの実績報告が締切までに上がってこない。催促してようやく出てきた数字が、翌週には修正される。さらに手前の段階として、案件の進捗が営業担当の頭の中にしかない、部門別の工数がどこにも記録されていないなど、「欲しい数字がそもそもどこにも存在しない」ケースも珍しくありません。経営企画部は数字を加工する部署である前に、数字を出してもらう部署であり、この「集める」段階で現場との根気強いやり取りが発生します。

数字が集まったとしても、次は「揃わない」問題が待っています。売上は販売管理システム、経費は会計ソフト、人員データは労務システム——数字が社内のあちこちに散らばっていて、集めて突き合わせるだけで月の大半が消えてしまう、という状態です。

報告が上がってこない 締切に遅れる・後から修正が入る 記録がそもそもない 案件の進捗が担当者の頭の中だけ データが散在している 販売管理・会計・労務など別システム 経営企画部 「集めて揃える」に 工数の大半を奪われる 月次資料 分析・打ち手の検討に 時間が残らない

図2:「集める・揃える」だけで月が終わる構造

経営企画の本来の仕事は「数字をもとに意思決定を支えること」ですが、立ち上げ期はその手前の「数字を集めて揃えること」に工数の大半を奪われます。ここで疲弊して、月次資料が「頑張って作ったが誰も深く見ない集計表」になってしまうケースを、私は何度も見てきました。

✔ 乗り越え方

最初から全データの統合を目指さないことです。まず「経営会議で毎月必ず見る数字」を10個前後に絞り、その数字だけは「締め後5営業日以内に必ず出る」といった基準を決めて守る。集まらない数字については、報告フォーマットと締切を固定し、経営会議で実際にその数字が使われる場面を現場に見せることが、遠回りなようで一番の近道です。「出した数字が経営に使われている」と分かれば、現場の報告は続きます。範囲を狭くしてでも「早く・確実に出る」ことを優先したほうが、結果的に信頼される経営企画部になります。月次の数字を早く出す具体的な方法は月次決算の早期化の記事で詳しく解説しています。

つまずき②:予算が「作って終わり」になる——予実管理が形骸化する理由

期初に頑張って予算を作ったのに、期中は誰も見ていない——これも典型的なつまずきです。

原因の多くは、予算の粒度と実績の粒度が合っていないことにあります。予算は「事業部別・月別」で作ったのに、会計データは勘定科目別でしか出てこない。すると予実の突き合わせが手作業になり、比較自体が億劫になって、予算が形骸化していきます。

予算 事業部別 × 月別で作成 ≠ 粒度が合わない 実績(会計データ) 勘定科目別でしか出ない 突き合わせが「手作業」になる 比較されなくなり、予算が形骸化

図3:粒度のミスマッチが予実管理を止める

✔ 乗り越え方

予算を作る前に「実績がどの単位で取れるか」を先に確認することです。順番が逆に見えるかもしれませんが、実績と同じ粒度で予算を組めば、予実比較は仕組みとして回り始めます。細かい予算を作って比較できないより、粗くても毎月比較できるほうが、経営にとっては価値があります。月次で回す型ははじめての予実管理、予算そのものの作り方は年度予算の作り方で詳しく解説しています。

つまずき③:経営会議が「報告会」になる

月次資料を整備できるようになると、次のつまずきが待っています。会議が「数字の読み上げ」で終わってしまう問題です。

過去の実績を説明して、質疑があって、時間切れ。「で、来月どうするか」の議論に入る前に会議が終わる。資料を作った経営企画担当としては徒労感が残りますし、経営陣も「会議の意味があるのか」と感じ始めます。

報告会型の資料(よくある形) 実績の明細が先頭・大部分を占める 過去の説明と質疑で時間を消費 時間切れ——未来の議論に入れない 意思決定型の資料(目指す形) 着地見込み(フォーキャスト)と論点が先頭 「来月どうするか」から議論が始まる 実績の明細は後ろ(参照用)に回す

図4:資料の主役を「過去」から「未来」へ移す

✔ 乗り越え方

資料の主役を「過去」から「未来」に移すことです。具体的には、着地見込み(フォーキャスト)と論点を資料の先頭に置き、実績の明細は後ろに回す。「今期はこのままだと○○になりそうです。論点は3つあります」から会議を始められれば、報告会は意思決定の場に変わっていきます。資料構成とアジェンダの型は経営会議の進め方で詳しく解説しています。

つまずき④:KPIの「定義」が人によってずれる

「売上」「粗利」「稼働率」——同じ言葉を使っているのに、部署によって集計の定義が違う。これも立ち上げ期に必ずと言っていいほど起こる問題です。

営業部の言う売上は受注ベース、経理の売上は計上ベース、社長の頭の中は入金ベース。数字が合わない原因を調べるだけで数日かかり、しかも調べた結果が「どちらも間違っていない(定義が違うだけ)」だったりします。

「売上」 営業部 受注ベースで集計 経理部 計上ベースで集計 社長 入金ベースでイメージ KPI定義書1枚で統一 集計元・タイミング・含む/含まないを明文化

図5:同じ「売上」でも定義は三者三様

✔ 乗り越え方

KPIを増やす前に、主要な指標について「定義書」を1枚作ることです。集計元のデータ、集計タイミング、含む・含まないの境界を明文化する。地味な作業ですが、これがあるだけで「数字が合わない」議論の大半は解消に向かいます。KPIは数より先に、まず定義です。定義書の項目と設計の手順はKPI設計の進め方で詳しく解説しています。

つまずき⑤:すべてが「一人」に載る——経営管理の属人化

最後は体制の問題です。立ち上げ期の経営企画は多くの場合、一人または兼任です。データ収集も、資料作成も、会議運営も、社長からの特命調査も、全部その一人に集中します。

すると何が起こるか。その人が忙しい月は月次が遅れ、退職すれば仕組みごと消えます。「経営管理が人に紐づいていて、仕組みになっていない」状態です。頑張っている本人ほど、この構造の危うさに気づきにくいのが厄介なところです。

データ収集 資料作成 会議運営 社長の特命調査 担当者 一人 休めば止まり、退職すれば仕組みごと消える 仕組み化 「仕組み」で回る状態 ・手順の文書化・テンプレート化 ・誰でも引き継げる月次の型 ・外部の力を借りる選択肢も

図6:属人化の構造と、目指す「仕組みで回る状態」

✔ 乗り越え方

属人化を「気合」で解消することはできません。手順の文書化・テンプレート化を進めるのが王道ですが、一人部署では文書化の時間すら取れないのが実情でしょう。この段階では、外部の力を借りるのも現実的な選択肢です。仕組みづくりを外部と一緒に進め、回り始めた仕組みを社内に残す、という順番であれば、外注は属人化の対極になり得ます。外部サービスの類型と選び方は外部CFO・CFO代行とはで詳しく解説しています。

まとめ:完璧な経営企画部を最初から目指さない

5つのつまずきを並べてみると、共通する原因が見えてきます。それは「最初から完璧な経営管理を目指してしまう」ことです。

全データを統合し、精緻な予算を作り、KPIを網羅し——という理想像から入ると、立ち上げ期の限られた体制では必ず息切れします。順番はむしろ逆で、

  1. 毎月必ず見る数字を絞って、確実に出す
  2. 実績と同じ粒度で予算を組み、予実を回す
  3. 会議の主役を「未来の数字」に移す
  4. KPIの定義を1枚にまとめる
  5. 仕組み化を進め、人への依存を減らす

と、小さく確実に積み上げるほうが、結果的に早く「機能する経営企画部」にたどり着きます。

STEP 1 毎月見る数字を絞り 確実に出す STEP 2 実績と同じ粒度で 予算を組む STEP 3 会議の主役を 「未来」に移す STEP 4 KPIの定義を 1枚にまとめる STEP 5 仕組み化で 属人化を減らす

図7:小さく確実に積み上げる5つのステップ

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執筆:コムレイドコンサルティング合同会社 代表社員 千葉 学(CFO・FP&A支援)

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