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最低賃金1,177円へ——中小企業の損益と資金繰りへの影響

本記事は2026年9月16日時点の公開情報に基づいています。都道府県ごとの改定額・発効日は、必ず厚生労働省の発表および都道府県労働局の情報をご確認ください。

ニュース解説の第2弾は、最低賃金の改定です。労務の話題と思われがちですが、人件費は多くの中小企業で最大の固定費——これは損益と資金繰りに直結する、ファイナンスのニュースです。

ニュースの概要

厚生労働省は2026年9月3日、全都道府県で2026年度(令和8年度)の地域別最低賃金の改定額が答申されたと発表しました(出典:厚生労働省 報道発表)。

  • 全国加重平均は1,177円(前年度1,121円から56円の引き上げ。目安制度が始まった昭和53年度以降で2番目の引き上げ幅)
  • 引き上げ額は54〜65円(最高額は東京の1,280円、最低額は1,085円)
  • 発効日は2026年10月1日〜12月2日の間で、都道府県ごとに順次(答申後、異議申出手続を経て正式決定)
全国加重平均 1,177円 前年度1,121円から 引き上げ額 +54〜65円 目安制度開始以来2番目の幅 発効日 10/1〜12/2 都道府県ごとに順次

図1:2026年度改定の概要(出典:厚生労働省 2026年9月3日発表)

まず実務の第一歩として、自社の所在都道府県の改定額と発効日を確認してください。発効日は10月1日とは限らず、都道府県によって12月まで幅があります。10月以降の給与計算・雇用契約・求人票の時給が新しい最低賃金を下回らないかの確認は、発効日までに必須です。

損益へのインパクトを「数字」にする

経営として重要なのは、この改定を感覚ではなく数字で捉えることです。

単純計算ですが、時給が56円上がると、月160時間勤務の場合で1人あたり月額約9,000円(56円×160時間=8,960円)の人件費増になります。対象が10人なら月約9万円、年間で約108万円。これに連動して社会保険料の会社負担分も増えます。

さらに、影響は最低賃金近傍の従業員だけにとどまりません。最低賃金が上がれば、その少し上の水準で働く従業員との差が縮まるため、賃金全体を底上げする圧力がかかります。試算の際は「最低賃金を下回る人の引き上げ分」だけでなく、この波及分も見込んでおくのが実務的です。

最低賃金の引き上げ 人件費の増加 時給×時間+社会保険料+周辺への波及 損益分岐点の再計算 価格転嫁・粗利の見直し 生産性の改善 業務の見直し・省力化投資 資金繰りへの反映 発効月からの支出増を織り込む

図2:改定の影響は「人件費」で止めず、3つの対応まで落とし込む

実務家の視点——財務面でやるべき3つのこと

第一に、影響額を試算して着地見込みに反映すること。対象者数×増加額で自社のインパクトを月次・年次で算出し、下期の着地見込みと来期計画に織り込みます。やり方は「はじめての予実管理」で書いた着地見込みの更新そのものです。

第二に、損益分岐点を計算し直し、価格を検討すること。人件費という固定費が恒常的に増える以上、同じ売上では利益が減ります。吸収する手段は、値上げ(価格転嫁)か、生産性の改善か、その組み合わせしかありません。変動費・固定費の分解と損益分岐点の考え方は「管理会計の始め方」をご参照ください。原資のない賃上げは続かない——価格の議論から逃げないことが、結局は雇用を守ります。

第三に、資金繰り表に発効月から反映すること。人件費増は発効月の翌月給与から毎月確実に出ていく支出です。「資金繰り表の作り方」で書いた月次の表に、自社の発効タイミングから織り込んでください。

なお、賃上げに関連しては、業務改善助成金など中小企業向けの支援制度もあります。公募状況や要件は時期により変わるため、活用を検討する場合は厚生労働省のサイトで最新情報をご確認ください。

✔ ポイント

近年、最低賃金の大幅な引き上げが続いています。今回を単発のコスト増として処理するのではなく、「人件費は毎年上がる」を前提に来期以降の計画を組むことをおすすめします。毎年秋に慌てる会社と、年度計画に織り込み済みの会社——差がつくのは改定の瞬間ではなく、その前の計画段階です。自社の経営管理がその前提に耐えられるかは、経営管理体制チェックリスト(約3分・無料)で確認できます。

まとめ

  1. 2026年度の最低賃金は全国加重平均1,177円(+56円)。発効は10月1日〜12月2日に都道府県ごとに順次——まず自社所在地の額と発効日の確認を
  2. インパクトは数字で捉える。単純計算で時給+56円は月160時間なら1人あたり月約9,000円。社会保険料と周辺賃金への波及も見込む
  3. 財務面の対応は「着地見込みへの反映・損益分岐点と価格の再検討・資金繰りへの織り込み」の3つ
  4. 単発対応ではなく「人件費は毎年上がる」前提で来期計画へ

当社のコムレイド経営企画部では、人件費増を織り込んだ着地見込みの更新、損益分岐点の分析、価格改定の検討材料づくりまでを、CFO・経営企画のプロが伴走してご支援しています。「今回の改定が自社の利益にどれくらい効くのか、数字で把握したい」という段階のご相談は、経営管理 無料診断(60分・オンライン)でお気軽にどうぞ。


出典(2026年9月16日閲覧)

執筆:コムレイドコンサルティング合同会社 代表社員 千葉 学(CFO・FP&A支援)

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