|コムレイド経営企画部ブログ

約束手形の廃止まで半年——資金繰りで見直す3つのこと

本記事は2026年10月5日時点の公開情報に基づいています。最新情報は全国銀行協会、公正取引委員会の資料と、取引金融機関にご確認ください。自社の取引が取適法の対象になるかなど、法律の適用については専門家にご相談ください。

ニュース解説の第8弾は、紙の約束手形・小切手の廃止です。「うちはもう手形はほとんど使っていない」という会社も多いと思いますが、取引先との支払いの条件が変わる以上、影響は資金繰りに及びます。受け取る側と支払う側、両方の視点で整理します。

ニュースの概要

政府の方針を受けて、産業界と金融界は紙の手形・小切手の利用廃止を進めています。全国銀行協会は、2027年3月末までに電子交換所での手形・小切手の交換枚数をゼロにすることを目標にしています(出典:全国銀行協会「紙の手形・小切手利用廃止へ」)。

  • 2027年3月末までに、紙の手形・小切手の交換が廃止される
  • 金融機関によっては、すでに手形・小切手の最終振出期限を設けており、10月1日以降は原則として手形・小切手による支払いができなくなっている
  • 最終振出期限の後に振り出された手形・小切手を受け取ると、資金化できない場合がある
  • 代わりの手段は、でんさい(電子記録債権)やインターネットバンキングによる振込など

あわせて、下請法を改正した中小受託取引適正化法(取適法)が2026年1月1日に施行され、対象となる取引では手形での支払いが禁止されました。でんさいなどで支払う場合も、納品日から60日以内に代金を満額受け取れなければ違反になります(出典:公正取引委員会)。

2026年1月1日 取適法の施行(手形払い禁止) 2026年10月1日以降 金融機関によっては手形で支払えない 2027年3月末まで 紙の手形・小切手の交換を廃止

図1:紙の約束手形の廃止に向けた流れ(出典:全国銀行協会・公正取引委員会の資料をもとに作成)

すでに取引の現場では手形離れが進んでいます。経済産業省が6月に公表した調査では、取引代金の支払手段を「現金のみ」とした中小企業が87.5%に達しました。一方で、支払期日が60日を超えている企業も6.6%残っています(出典:経済産業省 価格交渉促進月間(2026年3月)フォローアップ調査)。

受け取る側と支払う側で、影響は逆になる

手形がなくなることの影響は、立場によって正反対です。

代金を受け取る側 入金が早まり、資金化しやすくなる 手形の割引や保管の手間が減る 資金繰りは基本的に改善する 代金を支払う側 手形で支払いを先送りできなくなる 現金の支払いが早い時期に来る その分の手元資金が必要になる

図2:手形廃止の影響は、受け取る側と支払う側で逆になる

受け取る側にとっては、基本的に良い変化です。手形は満期まで現金にならず、急いで現金にするには割引の手数料がかかりました。振込やでんさいに置き換わり、支払期日も短くなれば、入金は早まります。

注意が必要なのは支払う側です。手形には、支払いを先の期日に送る効果がありました。手形での支払いがなくなると、その分、現金が出ていく時期が前に来ます。仕入れや外注の支払いを手形に頼ってきた会社ほど、一時的に手元資金が多く必要になります。

多くの中小企業は、仕入先には支払い、得意先からは受け取る、両方の立場を持っています。自社全体でどちらの影響が大きいかは、取引ごとに数字で確かめるしかありません。

実務家の視点——資金繰りで見直す3つのこと

第一に、手形を使っている取引を棚卸しすることです。受け取っている手形と、支払いに使っている手形を、取引先ごとに一覧にします。金額と、振り出しから期日までの日数(サイト)を並べれば、廃止によって入金と支払いがそれぞれどれだけ早まるかが見えてきます。受け取っている手形については、振り出した会社が今後どの手段に切り替えるのかも確認しておくと安心です。

第二に、支払う側の影響を資金繰り表で試算することです。手形をやめて振込に切り替えると、支払いのタイミングが前倒しになる月が出てきます。その月の資金が足りるかどうかを、切り替えの前に確かめてください。月の中で資金が細る時期をつかむには、「13週資金繰り表の作り方」で書いた週次の表が役立ちます。足りないと分かれば、早めに金融機関に相談できます。運転資金の相談は、数字の根拠があるほど進めやすくなります。

第三に、入金条件と価格を見直す機会にすることです。取適法では、手形払いの禁止に加えて、代金について協議に応じないまま一方的に価格を決めることも禁止されました。支払手段が変わるタイミングは、取引条件全体を話し合うきっかけになります。短観でも、中小企業の仕入価格と販売価格の判断には大きな差がありました(「日銀短観9月調査——中小企業の数字が示す3つの課題」参照)。自社の取引が取適法の対象になるかどうかは、公正取引委員会のサイトにある簡易診断ツールなどで確認できます。

なお、資金繰りを含む経営管理の現在地は、経営管理体制チェックリスト(約3分・無料)で確認できます。

✔ ポイント

手形の廃止は、支払手段の電子化という「事務の話」に見えます。しかし本質は、入金と支払いのタイミングが変わる「資金繰りの話」です。全国銀行協会も、電子的な決済手段への切り替えには時間がかかる場合があると注意を呼びかけています。2027年3月末を待たずに、自社の入金と支払いがどう変わるかを数字で確かめ、必要なら運転資金の手当てを早めに考えてください。資金繰り表の基本は資金繰り表の作り方で解説しています。

まとめ

  1. 紙の約束手形・小切手は2027年3月末までに廃止へ。10月1日以降は、金融機関によっては手形・小切手で支払えなくなっている
  2. 取適法(2026年1月施行)で、対象取引では手形払いが禁止。でんさいなどでも納品日から60日以内に満額の受け取りが必要
  3. 影響は立場で逆になる——受け取る側は入金が早まり、支払う側は支払いが前倒しになって手元資金が必要になる
  4. 手形を使う取引の棚卸し、資金繰り表での試算、入金条件と価格の見直しの3つを、廃止前に進める

当社のコムレイド経営企画部では、資金繰り表の整備や支払条件の変更による影響の試算、金融機関への説明資料づくりまでを、CFO・経営企画のプロが伴走してご支援しています。「手形の廃止で、自社の資金繰りがどう変わるか把握したい」という段階のご相談は、経営管理 無料診断(60分・オンライン)でお気軽にどうぞ。


出典(2026年10月5日閲覧)

執筆:コムレイドコンサルティング合同会社 代表社員 千葉 学(CFO・FP&A支援)

経営管理 無料診断(60分・オンライン)実施中
CFO・経営企画のプロが課題を言語化し、改善ロードマップの骨子をご提示します。
営業電話・売り込みは一切ありません。
無料診断を申し込む →
← ブログ一覧へ戻る