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日銀短観9月調査——中小企業の数字が示す3つの課題

本記事は2026年10月2日時点の公開情報に基づいています。数値の詳細は日本銀行「短観」をご確認ください。本記事は一般的な情報提供であり、景気や金利の先行きを予測するものではありません。

ニュース解説の第7弾は、日本銀行の「短観」です。新聞では「大企業・製造業の景況感」が見出しになりがちですが、短観には中小企業約4,900社の回答も載っています。今回は、中小企業の数字だけに絞って読んでみます。

ニュースの概要

日本銀行は2026年10月1日、全国企業短期経済観測調査(短観)の2026年9月調査を公表しました(出典:日本銀行 短観(概要)2026年9月)。全国9,104社(うち中小企業4,884社)が回答期間の8月26日〜9月30日に回答しています。

短観の数字の多くは「DI」と呼ばれる指標です。たとえば業況判断DIは、景況感が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を引いたもので、プラスなら「良い」が多いことを意味します。

中小企業(全産業)の主な結果は次のとおりです。

中小企業・全産業の主な判断DI(%ポイント) 6月調査 9月調査 変化 業況判断 「良い」−「悪い」 +13 +15 +2 雇用人員判断 「過剰」−「不足」 −39 −42 不足感が拡大 資金繰り判断 「楽である」−「苦しい」 +8 +8 横ばい 金融機関の貸出態度 「緩い」−「厳しい」 +12 +12 横ばい 借入金利水準判断 「上昇」−「低下」 +61 +70 上昇感が拡大

図1:中小企業・全産業の主な判断DI(出典:日本銀行 短観(概要)2026年9月調査)

  • 業況判断は+15(6月調査から2ポイント改善)。ただし3か月後の先行きは+11と、慎重な見方です
  • 雇用人員判断は−42(同3ポイント低下)。マイナスは「人が足りない」と答える企業が多いことを示し、不足感が一段と強まりました。非製造業は−47で、先行きは−50です
  • 借入金利水準判断は+70(同9ポイント上昇)。借入金利が「上昇した」と答える企業がさらに増えています
  • 一方、資金繰り判断(+8)と金融機関の貸出態度判断(+12)は、いずれも横ばいでした

数字から読む3つの課題

課題1:人手不足が、さらに強まっている

雇用人員判断の−42は、図1の中で最も大きなマイナスです。人が足りない状態は、採用・賃上げのコスト増と、受注を受けきれない機会損失の両方につながります。人手不足が倒産に至る経路については、「人手不足倒産が過去最多ペース——経営管理の3つの備え」で整理しました。

課題2:借入金利の上昇を、多くの企業が実感している

借入金利水準判断は、6月調査の+61から+70へ上がり、先行きは+74です。日銀が9月に政策金利を引き上げたことは「日銀利上げ、政策金利1.25%へ——中小企業の借入への影響」で解説しましたが、短観の数字は、金利の上昇が中小企業の借入に実際に及んでいることを示しています。一方で資金繰りや貸出態度は横ばいで、今のところ「借りにくくなった」というより「借りるコストが上がった」局面と読めます。

課題3:価格転嫁が追いついていない

短観では、仕入価格と販売価格についても「上昇」−「下落」のDIを聞いています。中小企業ではこの2つの間に大きな差があります。

中小企業の価格判断DI(「上昇」−「下落」、2026年9月調査) 製造業 仕入価格 71 販売価格 41 非製造業 仕入価格 65 販売価格 36 どちらも、仕入価格が上がると答える企業が、販売価格を上げると答える企業より約30ポイント多い

図2:仕入価格と販売価格の判断の差(出典:日本銀行 短観(概要)2026年9月調査)

仕入価格が上がっていると答える企業が、販売価格を上げていると答える企業を大きく上回っています。コストの上昇を価格に転嫁しきれていない状況が続いていることがうかがえます。経済産業省が6月に公表した調査でも、中小企業の価格転嫁率は54.2%、うち労務費は50.0%にとどまっています(出典:経済産業省 価格交渉促進月間(2026年3月)フォローアップ調査)。

なお、中小企業(全産業)の2026年度の経常利益計画は、前年度比5.6%の減益です。人件費・金利・仕入価格という3つのコスト増が、利益を押し下げる構図が数字に表れています。

実務家の視点——来期の計画に織り込むべき3つの前提

短観は景気の「予測」ではなく、企業が今どう感じているかの「集計」です。だからこそ、自社の計画の前提が世の中の実感とずれていないかを確かめる材料になります。

第一に、人件費は上がる前提で置くことです。人手不足感がここまで強いと、採用にも定着にも賃金の引き上げが欠かせません。来期の予算では、昇給と採用のコストを「既知の増加」として織り込んでください。今年の最低賃金の改定については「最低賃金1,177円へ——中小企業の損益と資金繰りへの影響」で整理しています。

第二に、支払利息は「去年と同じ」で置かないことです。借入金利の上昇を実感する企業がここまで増えている以上、変動金利の借入がある会社は、金利上昇分を予算と資金繰り表に反映すべきです。借入一覧を1枚にまとめ、金利の見直し時期を把握しておくことが出発点です。

第三に、価格の見直しを先送りしないことです。仕入価格と販売価格の差が続けば、利益は確実に削られます。商品・サービスごとの採算を把握し、どこから価格を見直すかを決めるには、「管理会計の始め方」で書いた事業別・商品別の損益が土台になります。価格交渉は、根拠となる数字があってこそ進めやすくなります。

なお、自社の経営管理の現在地は、経営管理体制チェックリスト(約3分・無料)で確認できます。

✔ ポイント

短観は3か月ごとに公表されます。四半期に一度、自社の数字と短観の中小企業の数字を並べてみると、「業況は世の中並みに改善しているのに、うちは利益が出ていない」「人手不足感は世の中ほど強くないが、それはなぜか」といった問いが生まれます。こうした問いは、そのまま経営会議の論点になります。ちょうど来期の予算を考える時期でもあり、外部環境の前提をそろえるのに良いタイミングです。予算の組み方は年度予算の作り方をご参照ください。

まとめ

  1. 日銀短観(2026年9月調査)で、中小企業・全産業の業況判断は+15と小幅に改善。ただし先行きは+11と慎重
  2. 目立つのは3つの課題——雇用人員判断−42の人手不足、借入金利水準判断+70の金利上昇、仕入価格と販売価格の約30ポイントの差
  3. 中小企業の2026年度経常利益計画は5.6%の減益。人件費・金利・仕入価格のコスト増が重なっている
  4. 来期の計画では、人件費の上昇・支払利息の増加・価格の見直しを前提に置く

当社のコムレイド経営企画部では、外部環境の変化を織り込んだ予算づくりや、事業別の採算の見える化、四半期ごとの着地見込みの更新までを、CFO・経営企画のプロが伴走してご支援しています。「来期の計画の前提を、数字で整理したい」という段階のご相談は、経営管理 無料診断(60分・オンライン)でお気軽にどうぞ。


出典(2026年10月2日閲覧)

執筆:コムレイドコンサルティング合同会社 代表社員 千葉 学(CFO・FP&A支援)

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