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人手不足倒産が過去最多ペース——経営管理の3つの備え

本記事は2026年9月25日時点の公開情報に基づいています。データの詳細は東京商工リサーチの公表記事をご確認ください。

ニュース解説の第4弾は、人手不足を原因とする倒産の増加です。「採用が難しい」という話は多くの経営者が実感していると思いますが、それが倒産という形でどれだけ表れているのか——データで確認し、経営管理の面からできる備えを考えます。

ニュースの概要

東京商工リサーチは2026年9月3日、8月の「人手不足」倒産の集計を公表しました(出典:東京商工リサーチ)。

  • 8月は32件(前年同月比39.1%増)。8月としては過去最多
  • 1-8月の累計は333件(前年同期比38.7%増)で、年間最多のペース
  • 要因別(1-8月累計)では、「人件費高騰」が175件(同121.5%増)、「従業員退職」が81件(同17.3%増)で、いずれも過去最多
  • 8月の倒産のうち、資本金1千万円未満の企業が22件(構成比68.7%)を占める

同社は、物価高と賃上げの負担、従業員の退職による業務への支障から、小・零細企業を中心に今後も増勢をたどる可能性が高いとしています。

2026年8月 32件 前年同月比 39.1%増 1-8月累計 333件 前年同期比 38.7%増 うち「人件費高騰」 175件 前年同期比 121.5%増

図1:2026年の「人手不足」倒産の概要(出典:東京商工リサーチ 2026年9月3日公表)

特に目を引くのは、「人件費高騰」を要因とする倒産が前年同期の2倍を超えていることです。人が採れない・辞めるという問題に加えて、雇い続けるコストそのものが経営を圧迫していることがデータに表れています。

人手不足が倒産につながる2つのルート

データの要因別の内訳から、人手不足が倒産につながる経路は大きく2つに分けて考えられます。

ルート① 人件費高騰 人件費が上がる 賃上げ・採用コスト 利益が削られる 価格に転嫁できない 資金が尽きる 支払いが続けられない ルート② 従業員退職 人が辞める キーパーソンの退職 業務が回らない 受注を受けられない 売上が落ちる 固定費は残る

図2:人手不足が倒産につながる2つのルート(考え方の整理)

ルート①(人件費高騰)は、コストが上がるのに価格が追いつかず、利益が削られ、最後は資金が尽きるパターンです。ルート②(従業員退職)は、人が辞めて業務が回らなくなり、受注を受けられずに売上が落ちるパターンです。後者は、売上が落ちても家賃や残った人の人件費などの固定費は残るため、損益が一気に悪化します。

どちらのルートも、最終的に会社を止めるのは「資金」です。そして、どちらもある日突然ではなく、数字の変化として事前に表れる——ここに、経営管理でできる備えの余地があります。

実務家の視点——経営管理でできる3つの備え

第一に、人件費の上昇を前提に、損益分岐点と価格を見直すことです(ルート①への備え)。人件費は固定費なので、上がれば損益分岐点も上がります。自社の損益分岐点が今どこにあり、人件費が上がるとどこまで上がるのかを計算してください。考え方は「管理会計の始め方」で解説しています。そのうえで、価格の見直しと生産性の改善を先送りしないことです。今年の最低賃金の改定については「最低賃金1,177円へ——中小企業の損益と資金繰りへの影響」で整理しました。

第二に、資金の減り方を早く察知する仕組みを持つことです(両方のルートへの備え)。利益の悪化は、まず資金の減少として表れます。月次の資金繰り表で「翌月繰越が細っていく月」を先に見つけ、不安があれば週次の13週表に切り替える。手遅れになる前に、金融機関に相談する時間を確保できます。作り方は「資金繰り表の作り方」と「13週資金繰り表の作り方」をご参照ください。

第三に、業務の属人化を減らすことです(ルート②への備え)。キーパーソンが一人辞めただけで業務が止まる会社は、退職がそのまま売上の減少に直結します。手順の文書化や担当の複線化は地味ですが、退職リスクへの最も確実な備えです。経営管理の業務自体も例外ではありません——数字が一人の担当者の頭の中にしかない状態の危うさは、「経営企画部の立ち上げで最初につまずく5つのこと」でも書きました。

なお、損益・資金繰り・体制を含む経営管理の現在地は、経営管理体制チェックリスト(約3分・無料)で確認できます。

✔ ポイント

データでは資本金1千万円未満の小規模な企業が多くを占めていますが、規模が大きければ安全というわけではありません。人手不足は業種・規模を問わない構造的な問題で、人件費の上昇も当面続くと見ておくのが現実的です。大切なのは、倒産に至る変化——利益率の低下、資金の減少、特定の人への業務の集中——を、手遅れになる前に数字で見える状態にしておくことです。

まとめ

  1. 2026年1-8月の「人手不足」倒産は333件(前年同期比38.7%増)で年間最多ペース。うち「人件費高騰」は175件と前年同期の2倍超
  2. 倒産に至るルートは大きく2つ——人件費高騰から利益が削られ資金が尽きるルートと、従業員退職から業務が止まり売上が落ちるルート
  3. 備えは「損益分岐点と価格の見直し」「資金繰りの早期警戒」「業務の属人化の解消」の3つ
  4. どちらのルートも、変化は数字として事前に表れる。見える状態にしておくことが最大の備え

当社のコムレイド経営企画部では、損益分岐点の分析や資金繰りの見える化、属人化しない月次の経営管理の仕組みづくりまでを、CFO・経営企画のプロが伴走してご支援しています。「人件費の上昇や人の入れ替わりに、自社の数字がどこまで耐えられるか把握したい」という段階のご相談は、経営管理 無料診断(60分・オンライン)でお気軽にどうぞ。


出典(2026年9月25日閲覧)

執筆:コムレイドコンサルティング合同会社 代表社員 千葉 学(CFO・FP&A支援)

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