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資金繰り表は会計ソフトのデータで作る——5つの手順

「資金繰り表を作ったものの、毎月の更新が大変で続かない」——資金繰りのご相談で、とてもよく聞く話です。理由を伺うと、多くの場合、過去の入出金を毎月通帳から一行ずつ書き写しています。

実は、その数字の多くは、すでに会計ソフトの中にあります。経理担当者や顧問税理士が記帳した仕訳には、お金がいつ、何のために出入りしたかが記録されているからです。本記事では、会計ソフトのデータを使って資金繰り表の実績部分を集める手順を整理します。資金繰り表そのものの基本的な作り方は「資金繰り表の作り方——5ステップで始める、続けられる資金管理」で解説していますので、あわせてご覧ください。

なお、勘定奉行、freee会計、マネーフォワード クラウド会計、弥生会計など、どの会計ソフトを使っていても考え方は同じです。画面の名前や出力の方法はソフトによって異なるため、具体的な操作はお使いのソフトのマニュアルやサポートでご確認ください。

会計データと資金繰り表は「見ている数字」が違う

手順に入る前に、押さえておきたい前提があります。会計ソフトの試算表や損益計算書と、資金繰り表とでは、見ている数字が違うということです。

試算表・損益計算書(損益) 資金繰り表(お金) 売上は、計上した月に載る 売上は、入金された月に載る ≠ 減価償却費は、費用になる 減価償却費では、お金は出ていかない ≠ 借入金の返済は、費用にならない 借入金の返済で、お金は出ていく ≠

図1:損益の数字と資金繰り表の数字は、見ているものが違う

そのため、試算表の売上や費用の数字をそのまま資金繰り表に書き写しても、資金繰り表にはなりません。使うべきなのは、損益の数字ではなく、預金と現金の勘定科目の動きです。預金口座からお金が出入りするたびに、その相手が何だったのか(売掛金の回収か、仕入の支払いか、借入金の返済か)が仕訳に記録されています。これを集計すれば、資金繰り表の実績ができあがります。

なお、資金繰りを含む経営管理の現在地は、経営管理体制チェックリスト(約3分・無料)で確認できます。

会計データで資金繰り表を作る5つの手順

STEP 1:資金繰り表の行(収入・支出の区分)を決める

最初に、資金繰り表にどんな行を並べるかを決めます。「売上の入金」「仕入・外注の支払」「人件費の支払」「経費の支払」「借入の入金」「借入の返済」といった程度の粒度で十分です。資金繰り表の記事で紹介した「前月繰越+収入−支出=翌月繰越」の形に、この行を当てはめます。行を細かくしすぎると、次の手順の対応づけが大変になり、続かなくなります。

STEP 2:預金・現金の動きを、相手科目つきで出力する

次に、会計ソフトから預金と現金の勘定科目の動きを取り出します。多くの会計ソフトでは、総勘定元帳などの画面で期間と勘定科目を指定し、表計算ソフトで扱える形式(CSVなど)で出力できます。出力するデータには、日付、金額のほかに、相手科目(その入出金の相手になった勘定科目)が含まれていることを確認してください。資金繰り表の行に振り分けるときの手がかりになります。

銀行口座が複数ある場合は、口座ごとに勘定科目や補助科目を分けて記帳しているはずです。すべての口座と現金について、同じ期間のデータを出力します。

STEP 3:相手科目と資金繰り表の行の「対応表」を作る

ここがいちばん大切な手順です。出力したデータの相手科目が、資金繰り表のどの行にあたるのかを決めた「対応表」を作ります。

相手科目(会計ソフトのデータ) 資金繰り表の行 売掛金、売上高 売上の入金 買掛金、仕入高、外注費 仕入・外注の支払 給料手当、役員報酬 人件費の支払 地代家賃、支払手数料など 経費の支払 長期借入金、短期借入金 借入の入金/借入の返済 普通預金(自社の別の口座) 集計しない(口座間の移動)

図2:相手科目と資金繰り表の行の対応表(例)——一度作れば毎月使い回せる

対応表は一度作れば、毎月そのまま使い回せます。表計算ソフトの検索関数などを使えば、出力したデータに資金繰り表の行を自動で付けることもできます。新しい相手科目が出てきたときだけ、対応表に1行足せば済みます。

STEP 4:月ごとに集計し、残高を通帳と照合する

対応表で行を付けたデータを、月ごと・行ごとに集計すれば、資金繰り表の実績ができます。最後に必ず、資金繰り表の月末残高が、会計ソフトの現預金残高と、実際の通帳の残高に一致しているかを確かめてください。一致していれば、集計に漏れや重複がないことの確認になります。ずれていれば、記帳の漏れか、対応表の抜けのどちらかです。

STEP 5:実績と予定を並べ、予定の精度を上げる

実績ができたら、先々の予定と並べて一つの表にします。予定は、会計データからは作れません。売掛金や買掛金の残高と、取引先ごとの回収・支払の条件、借入の返済予定表などから見込みます。

ここで実績が効いてきます。前月に立てた予定と実績を比べ、どの行がどれだけずれたのかを毎月見ていくと、予定の立て方の癖が分かってきます。入金の予定がいつも遅れるなら、その取引先の回収の見込みを後ろにずらす。経費の支払いがいつも予定を上回るなら、見積もりを見直す。予定と実績の差を見るという考え方は、損益の予実管理と同じです。

会計データを使うときの3つの注意点

会計ソフトのデータは便利ですが、使い方を誤ると、かえって数字を見誤ります。私が現場でよく出会う注意点を3つ挙げます。

第一に、記帳が遅れていると使えないことです。会計データを資金繰り表に使えるのは、記帳が済んでいる月までです。月末から何週間も記帳が終わらない状態では、実績が手に入るのが遅すぎて、資金繰りの判断に間に合いません。月次の締めを早める工夫は「月次決算の早期化——締め後5営業日で数字を出す方法」で解説しています。

第二に、相手科目が一つに決まらない仕訳があることです。一つの入出金に複数の科目が関わる仕訳(たとえば、振込手数料を差し引いて入金された売掛金)では、相手科目が「諸口」などと表示されることがあります。こうした仕訳は、内訳を確認して振り分ける必要があります。件数が多い場合は、記帳のしかたを経理担当者や顧問税理士と相談するのも一つの方法です。

第三に、口座間の移動を収支に含めないことです。自社の口座から別の口座へ資金を移しただけの動きは、会社全体で見ればお金は増えも減りもしていません。対応表で「集計しない」と決めておかないと、収入と支出の両方が実態より大きく見えてしまいます。

✔ ポイント

資金繰り表が続かない原因の多くは、作り方ではなく更新の手間にあります。実績は会計データから集め、人が考えるのは先々の予定だけ——この役割分担ができると、資金繰り表は毎月の作業から、経営の判断の道具に変わります。なお、会計ソフトによっては資金繰りのレポート機能を備えているものもあります。その場合も、どの相手科目をどの行に集計しているのかを一度確かめておくと、数字を安心して使えます。資金に余裕がない時期は、13週資金繰り表で週単位に細かく見ることもおすすめします。

まとめ

  1. 試算表や損益計算書の数字は、そのままでは資金繰り表にならない。使うのは預金と現金の勘定科目の動き
  2. 手順は、資金繰り表の行を決める、預金・現金の動きを相手科目つきで出力する、相手科目と行の対応表を作る、月ごとに集計して通帳と照合する、実績と予定を並べる——の5つ
  3. 対応表は一度作れば毎月使い回せる。新しい相手科目が出たときだけ足す
  4. 注意点は、記帳の遅れ、相手科目が一つに決まらない仕訳、口座間の移動の3つ

資金繰りを含む経営管理の現在地は、経営管理体制チェックリスト(約3分・無料)で確認いただけます。また、当社のコムレイド経営企画部では、会計データを使った資金繰り表の仕組みづくりから、毎月の更新と経営会議での活用までを、CFO・経営企画のプロが伴走してご支援しています。記帳そのものの代行は当社の業務範囲外ですが、記帳されたデータを経営に使える形にすることができます。「資金繰り表を作ったが続かない」という段階のご相談は、経営管理 無料診断(60分・オンライン)でお気軽にどうぞ。


執筆:コムレイドコンサルティング合同会社 代表社員 千葉 学(CFO・FP&A支援)

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