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予算取りとは——通る予算要求の作り方と進め方

予算取りとは、来期(または特定の取り組み)に使うお金を、社内で確保するための要求と調整のことです。各部門が「この取り組みに、これだけの費用が必要です」と要求し、経営がそれを会社全体の計画と照らし合わせて配分を決めます。

「予算取り」という言葉には、部門どうしで予算を取り合うような響きがあります。実際、私がご相談を受ける会社でも、声の大きい部門ほど予算が多く付く、前年と同じ額が何となく通る、といった悩みをよく聞きます。本記事では、要求する部門の側と、取りまとめる経営・経営企画の側の両方から、予算取りの進め方を整理します。会社全体の予算の立て方は「年度予算の作り方——来期予算の立て方と計算の5ステップ」で解説していますので、あわせてご覧ください。

予算取りの流れ

会社によって細かな違いはありますが、予算取りはおおむね次の流れで進みます。

①経営 来期の方針と 枠を示す ②各部門 予算を 要求する ③経営企画 ヒアリングし 調整する ④経営会議 配分を決めて 通知する ⑤期中 予実で効果を 確かめる 期中の結果が、翌年の予算取りの根拠になる

図1:予算取りの流れ——決めて終わりではなく、翌年につながる

時期は決算期から逆算します。たとえば3月決算の会社なら、秋に経営が方針を示し、冬にかけて部門の要求と調整を進め、年明けから2月ごろに決定する、という流れが一般的です。スケジュールの組み方は年度予算の記事で詳しく書いています。

大切なのは、図1の①と⑤です。予算取りというと②〜④の要求と調整ばかりに目が向きがちですが、最初に経営が方針と枠を示さなければ、部門はそれぞれの都合で要求を出すしかありません。そして、期中に予算の効果を確かめなければ、翌年の予算取りも根拠のない交渉になってしまいます。

なお、自社の予算の進め方を含む経営管理の現在地は、経営管理体制チェックリスト(約3分・無料)で確認できます。

通る予算要求の作り方——要求書に書く6つの項目

ここからは、予算を要求する部門の側の話です。予算要求が通るかどうかは、金額の大きさより、判断に必要な材料がそろっているかで決まります。経営が知りたいのは、「そのお金を使うと、会社の何が良くなるのか」と「それは本当にその金額が必要なのか」の2つです。これに答えるために、予算要求書には次の6項目を書きます。

1 目的 何のために使うのか 2 動かしたい数字 どのKPIを、どこまで動かすか 3 金額と根拠 単価×数量などの計算の内訳 4 使う時期 いつ、いくら支払うのか 5 優先順位 満額でない場合に、何を残すか 6 効果の確かめ方 いつ、何の数字で確かめるか

図2:予算要求書に書く6つの項目——判断の材料をそろえる

1. 目的は、その費用で何を実現したいのかを一文で書きます。「展示会に出展するため」ではなく、「新しい業界の見込み客を増やすため」のように、手段ではなく目的を書くのがポイントです。

2. 動かしたい数字は、目的を数字に置き換えたものです。見込み客の数、商談の数、作業時間など、その費用で動かしたいKPIと、どこまで動かしたいかを書きます。会社のKPIと結びついた要求は、経営にとって判断しやすくなります。KPIの考え方は「KPI設計の進め方——4ステップとKPI定義書の作り方」で解説しています。

3. 金額と根拠は、「単価×数量」のように、金額がどう計算されたのかが分かる形で書きます。見積もりがあれば添付し、前年と比べて増減がある場合はその理由も書きます。

4. 使う時期は、いつ、いくら支払うのかです。年間の総額だけでなく支払いの時期が分かると、経営は資金繰りへの影響も一緒に判断できます。

5. 優先順位は、要求が満額で通らなかった場合に、何を残して何を削るかです。複数の取り組みを要求するなら、順番を付けておきます。削減案を自分から示せる部門は、経営から信頼されます。

6. 効果の確かめ方は、いつ、どの数字で効果を確かめるかです。たとえば「出展から3か月後の商談数で確かめる」のように書いておくと、期中に効果を振り返れます。これが翌年の予算取りで、何よりも説得力のある根拠になります。

予算取りが「取り合い」になる会社の3つの共通点

次に、予算を取りまとめる経営・経営企画の側の話です。予算取りが部門どうしの取り合いになってしまう会社には、共通点があります。

第一に、方針を示さないまま要求を集めていることです。来期に何を優先するのか、全体でどのくらいの費用の枠があるのかが示されていなければ、部門は多めに要求しておくのが合理的になります。経営が先に方針と枠を示すこと——年度予算の記事で書いた「トップダウンとボトムアップの併用」の、トップダウンの部分です。

第二に、前年の実績に上乗せして決めていることです。前年の金額を基準にすると、効果のなかった費用もそのまま残り、新しい取り組みに回すお金が生まれません。要求書の6項目、とりわけ目的と効果の確かめ方を、継続の費用にも求めることで、前年踏襲から抜け出せます。

第三に、予算を取った後に、誰も効果を確かめていないことです。予算が決まった時点で関心が途切れると、部門にとって予算取りは「取れるだけ取る」交渉にしかなりません。月次の予実管理の中で、予算を使った取り組みの効果も一緒に確かめる。その積み重ねが、翌年の予算取りを数字に基づく話し合いに変えていきます。予実管理の進め方は「はじめての予実管理——『予算が作って終わり』にならない月次の型」で解説しています。

✔ ポイント

予算取りは、部門と経営の綱引きではなく、限られたお金をどこに使えば会社が一番良くなるかを一緒に決める場です。そのためには、要求する側が判断の材料をそろえ、取りまとめる側が方針と枠を先に示し、決めた後に効果を確かめる——この3つがそろう必要があります。最初から完璧な仕組みは要りません。まずは要求書の6項目を共通の書式にするだけでも、予算取りの会議の中身は変わります。会議での議論の進め方は、経営会議の進め方の記事もご参照ください。

まとめ

  1. 予算取りとは、来期に使うお金を社内で確保するための要求と調整のこと
  2. 流れは、経営が方針と枠を示す、部門が要求する、経営企画が調整する、経営会議で決める、期中に効果を確かめる——の5段階。最初と最後が特に大切
  3. 通る予算要求書には、目的、動かしたい数字、金額と根拠、使う時期、優先順位、効果の確かめ方の6項目を書く
  4. 取り合いを防ぐには、方針を先に示す、前年踏襲にしない、取った後に効果を確かめる

予算取りの仕組みを含む経営管理の現在地は、経営管理体制チェックリスト(約3分・無料)で確認できます。当社のコムレイド経営企画部では、予算方針の整理から、部門の予算要求の書式づくり、経営会議での配分の議論、期中の予実管理までを、CFO・経営企画のプロが伴走してご支援しています。「来期の予算づくりを、今年こそ数字で進めたい」という段階のご相談は、経営管理 無料診断(60分・オンライン)でお気軽にどうぞ。


執筆:コムレイドコンサルティング合同会社 代表社員 千葉 学(CFO・FP&A支援)

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