|コムレイド経営企画部ブログ

経営者保証なし融資が55.7%に——外すための3要件

本記事は2026年9月30日時点の公開情報に基づいています。データの詳細は金融庁の公表資料をご確認ください。経営者保証の要否は、最終的に各金融機関が判断します。個別の借入については取引金融機関にご相談ください。

ニュース解説の第6弾は、経営者保証です。中小企業が融資を受けるとき、社長が会社の借入の連帯保証人になる——長く「当たり前」だったこの慣行が、データの上ではっきり変わってきています。

ニュースの概要

金融庁は2026年6月26日、民間金融機関(銀行・信用金庫・信用組合など529機関)における「経営者保証に関するガイドライン」の活用実績(2025年度)を公表しました(出典:金融庁)。

  • 新規融資件数のうち、経営者保証に依存しない融資の割合は55.7%(2024年度は52.9%)
  • 「経営者保証に依存しない融資」には、無保証の融資のほか、一定の条件を守る限り保証の効力が生じない「停止条件付保証契約」などの代替手法を使った融資も含まれる
  • 代表者の交代時に、新しい経営者に保証を求めなかったケースは56.4%(2025年度)
12.2% 2015 14.4% 2016 16.5% 2017 19.2% 2018 21.6% 2019 27.6% 2020 30.7% 2021 33.9% 2022 47.6% 2023 52.9% 2024 55.7% 2025 新規融資件数に占める「経営者保証に依存しない融資」の割合(民間金融機関・年度) (年度)

図1:経営者保証に依存しない融資の割合の推移(出典:金融庁 2026年6月26日公表)

10年前の2015年度は12.2%でした。2023年度に大きく伸び、2024年度に半数を超え、2025年度は55.7%。新規の融資では、「保証なし」がすでに多数派になっています。

経営者保証を外すための「3要件」

では、どうすれば保証なしで借りられるのか。基準になるのが、全国銀行協会と日本商工会議所が策定した「経営者保証に関するガイドライン」です。中小企業庁は、ガイドラインの要件を次の3つに整理しています(出典:中小企業庁「経営者保証」)。

1 法人と個人の分離 資産の所有やお金の やりとりを明確に区分 2 財務基盤の強化 法人のみの資産や 収益力で返済できる 3 適時適切な情報開示 金融機関に財務情報を タイミングよく開示する 経営者保証なしで融資を受けられる可能性 既存の保証も見直せる可能性がある(最終判断は金融機関)

図2:経営者保証に関するガイドラインの3要件(出典:中小企業庁「経営者保証」ページをもとに作成)

3つの要件のすべて、または一部を満たせば、保証なしで融資を受けられたり、すでに提供している保証を見直せたりする可能性があります。ガイドラインに法的な拘束力はなく、保証を外すかどうかの最終判断は金融機関に委ねられます。それでも、金融機関がこの3つの観点で会社を見ていることは知っておいて損はありません。

事業承継での変化と、新しい相談窓口

経営者保証は、事業承継の障害になりやすい問題です。後継者が「借入の保証まで引き継ぐなら継がない」と考えることは珍しくありません。

代表者交代時の保証の扱い(2025年度・民間金融機関) 旧経営者の保証を解除し、新経営者にも求めず 16.7% 旧経営者の保証は残し、新経営者には求めず 39.7% 旧経営者の保証を解除し、新経営者に求めた 40.6% 旧・新の両方から保証を取った(二重徴求) 3.0%

図3:代表者交代時の保証の扱い(出典:金融庁 2026年6月26日公表の2025年度実績)

旧経営者と新経営者の両方から保証を取る「二重徴求」は3.0%と例外的になり、新経営者に保証を求めなかったケースは合わせて56.4%です。一方で、旧経営者の保証が残ったままのケースが39.7%あります。会社を譲ったのに、前の社長が保証人のまま——承継後の見落としやすい論点です。

こうした状況を受けて、金融庁は2026年5月1日、「M&A・事業承継時における経営者保証情報ネットワーク」を開設しました(出典:金融庁)。M&A・事業承継を検討中、または実施後の経営者・後継者が、金融機関から保証を外せない理由の説明がない、説明に納得できない、承継後も旧経営者に保証が残ったままで対応がない——といった場合に、相談シートで状況を共有できる仕組みです。ただし、個別の案件をあっせんしたり、保証の解除を確約したりするものではありません。M&A・事業承継以外の経営者保証の相談は、金融庁の「経営者保証ホットライン」が窓口です。

実務家の視点——経営者保証を外すために今できる3つのこと

第一に、3要件の中でも「情報開示」から始めることです。3つの要件のうち、財務基盤の強化は時間がかかりますが、適時適切な財務情報の開示は、経営管理の整備で比較的早く進められます。決算書を年1回持っていくだけでなく、月次の試算表や資金繰り表を定期的に共有する。そのためには、数字が早く・正確に出ることが前提です。「月次決算の早期化」や「資金繰り表の作り方」で書いた仕組みは、そのまま金融機関への開示の土台になります。

第二に、法人と個人のお金の線引きを見直すことです。社長個人への貸付や、会社の資金と個人の資金が混ざったやりとりは、要件1で最も問われる点です。役員報酬・貸付金・会社名義の資産の使い方などを、この機会に棚卸ししてください。

第三に、金融機関と「理由」を話すことです。新規の借入や借換のタイミングは、保証について相談しやすい機会です。保証が必要だと言われたら、どの要件が足りないのか、何をすれば外せる可能性があるのかを具体的に聞いてみてください。金融庁は、保証を求める場合に金融機関が適切に説明し記録しているかを把握しており、2025年度は保証なしの融資と、説明・記録を行った保証付き融資を合わせて99.9%に達しています。理由が分かれば、それが自社の経営管理の改善目標になります。金融機関との平時からの対話の大切さは、「日銀利上げ、政策金利1.25%へ——中小企業の借入への影響」でも書きました。

なお、財務情報の開示を含む経営管理の現在地は、経営管理体制チェックリスト(約3分・無料)で確認できます。

✔ ポイント

経営者保証を外すための3要件は、結局のところ「会社が会社として自立しているか」を問うものです。お金の線引きが明確で、会社の力で返済でき、数字をタイミングよく説明できる会社——これは保証の有無にかかわらず、金融機関から信頼され、後継者が安心して継げ、M&Aでも評価される会社の姿そのものです。事業承継やM&Aを見据えるなら、旧経営者の保証の扱いまで含めて早めに準備を始めてください。M&Aでの経営者保証をめぐるトラブルについては、中小M&A資格試験が創設への記事でも触れています。

まとめ

  1. 2025年度、民間金融機関の新規融資のうち、経営者保証に依存しない融資は55.7%。10年前の12.2%から大きく伸び、「保証なし」が多数派に
  2. 保証を外す基準はガイドラインの3要件——法人と個人の分離、財務基盤の強化、適時適切な情報開示。最終判断は金融機関
  3. 代表者交代時の二重徴求は3.0%と例外的に。ただし旧経営者の保証が残るケースが39.7%。2026年5月には事業承継時の相談ネットワークも開設
  4. 今できることは、情報開示の仕組みづくり、法人と個人のお金の線引き、金融機関と「理由」を話すこと

当社のコムレイド経営企画部では、月次の数字を早く正確に出す仕組みづくりや、金融機関への説明資料の整備など、経営者保証の見直しの土台となる経営管理を、CFO・経営企画のプロが伴走してご支援しています。「金融機関にどんな数字を、どう説明すればいいか整理したい」という段階のご相談は、経営管理 無料診断(60分・オンライン)でお気軽にどうぞ。


出典(2026年9月30日閲覧)

執筆:コムレイドコンサルティング合同会社 代表社員 千葉 学(CFO・FP&A支援)

経営管理 無料診断(60分・オンライン)実施中
CFO・経営企画のプロが課題を言語化し、改善ロードマップの骨子をご提示します。
営業電話・売り込みは一切ありません。
無料診断を申し込む →
← ブログ一覧へ戻る