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後継者難倒産が過去最多——事業承継で今できる3つの備え

本記事は2026年10月8日時点の公開情報に基づいています。データの詳細は東京商工リサーチの公表記事をご確認ください。

ニュース解説の第10弾は、後継者がいないことによる倒産です。「事業承継はまだ先の話」と考えている経営者は多いと思いますが、データが示しているのは、承継の問題がある日突然やってくるという現実です。

ニュースの概要

東京商工リサーチは2026年10月6日、2026年度上半期(4〜9月)の「後継者難」倒産の集計を公表しました(出典:東京商工リサーチ TSRデータインサイト)。

  • 2026年度上半期の「後継者難」倒産は263件(前年同期比23.4%増)。2023年度同期の222件を上回り、上半期として過去最多
  • 要因別では、代表者の「死亡」が120件、「体調不良」が105件。この2つで225件と、全体の8割超(85.5%)を占める
  • 資本金1千万円未満の企業が180件(構成比68.4%)、形態別では破産が249件(同94.6%)

同社は、代表者の高齢化が進むなか、事業承継に向けた準備が遅れるほど「後継者難」倒産は増える可能性が高いと指摘しています。

2026年度上半期の件数 263件 前年同期比 23.4%増・過去最多 代表者の死亡・体調不良 85.5% 263件のうち225件 資本金1千万円未満 68.4% 263件のうち180件

図1:2026年度上半期の「後継者難」倒産の概要(出典:東京商工リサーチ 2026年10月6日公表)

「後継者不在率」は改善しているのに、なぜ増えるのか

少し意外なデータもあります。帝国データバンクの調査によると、2025年の日本企業の後継者不在率は50.1%で、前年から2.0ポイント下がり、7年連続で改善しています(出典:帝国データバンク 全国「後継者不在率」動向調査(2025年))。後継者が決まっている会社は、全体としては増えているのです。

それでも後継者難の倒産が増えている理由を、要因の内訳が教えてくれます。

「後継者難」倒産263件の要因(2026年度上半期) 代表者の死亡 120件 代表者の体調不良 105件 その他 38件 「その他」は、全体263件から死亡・体調不良の225件を除いた件数

図2:「後継者難」倒産の要因の内訳(出典:東京商工リサーチ 2026年10月6日公表をもとに作成)

8割を超えるのは、代表者の死亡や体調不良——つまり、予定していなかったタイミングで経営者が退くケースです。後継者が決まっていない会社では、社長が突然いなくなった時点で、事業を引き継ぐ人も、会社の状況を説明できる人もいなくなります。小規模な会社ほど社長に経営のすべてが集中しやすく、その影響は大きくなります。

後継者を「いつか決める」ことと、「社長に何かあっても事業が止まらない状態をつくっておく」ことは、別の問題です。前者が進んでいても、後者の備えがないと、突然の事態には対応できません。

実務家の視点——事業承継で今できる3つの備え

事業承継の準備には時間がかかります。後継者を誰にするかは、すぐには決められないかもしれません。ただ、後継者が決まる前からできる備えがあります。

第一に、経営の数字を社長の頭の外に出すことです。売上の見通し、資金繰り、借入の条件、主要な取引先との約束——これらが社長の頭の中にしかない状態が、突然の事態で事業を止める一番の原因です。月次の数字や資金繰り表を社内の誰かが見られる状態にしておけば、それだけで引き継ぎの土台になります。属人化の問題は「経営企画部の立ち上げで最初につまずく5つのこと」でも書きました。

第二に、経営者保証と借入の状況を整理しておくことです。経営者保証は、後継者が会社を継ぐのをためらう大きな理由の一つです。どの借入に誰の保証が付いているかを一覧にし、外せる可能性があるかを金融機関と話しておくことが、承継の障害を減らします。「経営者保証なし融資が55.7%に——外すための3要件」で整理したとおり、事業承継時の経営者保証については2026年5月に金融庁の相談窓口もできています。

第三に、承継の選択肢を早めに並べてみることです。親族への承継、社内の人材への承継、M&Aによる第三者への承継——どの道を選ぶかで、準備の中身も期間も変わります。M&Aの支援者選びについては「中小M&A資格試験が創設へ——M&Aを検討する経営者の視点」で解説しました。承継やM&Aにかかる費用には、事業承継・M&A補助金(十六次公募の申請受付は2026年11月6日まで)の活用も考えられます(「事業承継・M&A補助金 十六次公募——押さえるべきポイント」参照)。

なお、数字の見える化や体制を含む経営管理の現在地は、経営管理体制チェックリスト(約3分・無料)で確認できます。

✔ ポイント

事業承継は「後継者を決めること」だと思われがちですが、実務の出発点は「社長がいなくても会社の状態が分かること」です。数字が見えていて、借入と保証の状況が整理されていれば、親族に継ぐ場合も、社内の人材に任せる場合も、M&Aで第三者に引き継ぐ場合も、話は格段に進めやすくなります。逆に、数字が社長の頭の中にしかない会社は、どの道を選んでも時間がかかります。後継者が決まっていない今だからこそ、経営管理の整備から始める価値があります。

まとめ

  1. 2026年度上半期の「後継者難」倒産は263件(前年同期比23.4%増)で、上半期として過去最多
  2. 要因の85.5%は代表者の死亡・体調不良。予定していないタイミングで経営者が退くことが倒産につながっている
  3. 後継者不在率は7年連続で改善しているが、「社長に何かあっても事業が止まらない状態」は別に備える必要がある
  4. 今できる備えは、経営の数字を社長の頭の外に出す、経営者保証と借入を整理する、承継の選択肢を早めに並べる——の3つ

当社コムレイドコンサルティングは、コムレイド経営企画部での経営管理支援に加え、M&A支援(戦略策定からPMIまで)も行っています。「将来の承継に備えて、まず会社の数字を社長以外も分かる状態にしたい」という段階のご相談は、経営管理 無料診断(60分・オンライン)でお気軽にどうぞ。


出典(2026年10月8日閲覧)

執筆:コムレイドコンサルティング合同会社 代表社員 千葉 学(CFO・FP&A支援)

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