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リフォーム倒産が最多ペース——赤字受注を防ぐ採算管理

本記事は2026年10月15日時点の公開情報に基づいています。データの詳細は東京商工リサーチの公表記事をご確認ください。

ニュース解説の第14弾は、リフォーム工事業の倒産です。特定の業界のニュースですが、そこで起きている「仕事はあるのに利益が残らない」という問題は、工事に限らず、システム開発や制作、設備の据え付けなど、案件ごとに見積もって受注するビジネスに共通しています。今回は、その採算管理の側面から考えます。

ニュースの概要

東京商工リサーチは2026年10月11日、リフォーム工事業(建築リフォーム工事業、負債1,000万円以上)の倒産の集計を公表しました(出典:東京商工リサーチ TSRデータインサイト)。

  • 2026年1〜9月のリフォーム工事業の倒産は96件(前年同期比20.0%増)。1〜9月としては2002年以降で最多を更新し、このペースでは年間120件を超える見通し
  • 原因別では、販売不振が67件(同19.6%増)、赤字累積が17件(同70.0%増)。この2つで約9割を占める
  • 負債額1億円未満が78件(構成比81.2%)と小規模な倒産が中心。ただし1億円以上5億円未満も18件発生し、中堅規模にも広がりつつある
2026年1〜9月の件数 96件 前年同期比20.0%増・2002年以降で最多 販売不振+赤字累積 約9割 96件のうち84件 負債1億円未満 81.2% 96件のうち78件

図1:2026年1〜9月のリフォーム工事業の倒産の概要(出典:東京商工リサーチ 2026年10月11日公表)

「利益なき工事」は、どう生まれるのか

東京商工リサーチは、資材の高騰、働き方改革による職人不足、人件費の上昇に加え、受注競争が年々厳しくなっていると指摘しています。物件価格が上がるなかで、購入者の予算に合わせるためにリフォーム代の値引きで帳尻を合わせる構図があり、値引きの行き着く先は赤字受注だとしています。同社はこうした状況を、赤字の累積による「利益なき工事」での息切れ倒産と表現しています。

ここで注目したいのは、原因の多くが「仕事がない」ことではなく、「仕事をしても利益が残らない」ことにある点です。見積もりの時点では利益が出るはずだった案件が、値引き、資材の値上がり、人手の確保にかかる費用によって、少しずつ削られていきます。一つひとつは小さな譲歩でも、重なれば案件全体が赤字になります。

▼ ▼ ▼ 見積もり時の 想定利益 受注競争での 値引き 資材の 値上がり 職人不足・ 人件費の上昇 最後に 残る利益

図2:「利益なき工事」が生まれる構図(東京商工リサーチの分析をもとに作成したイメージ。高さは実際の数値ではありません)

やっかいなのは、この削られ方が会社全体の月次の数字では見えにくいことです。売上は立ち、現場は忙しく回っているため、経営者が「この案件は赤字だった」と気づくのは、工事が終わって精算したとき、あるいは決算で利益が残っていないと分かったときになりがちです。気づいたときには、同じ条件で受けた次の案件がすでに動いています。

実務家の視点——赤字受注を防ぐ3つの仕組み

受注型のビジネスで利益を守るには、案件ごとの採算を「受ける前」「動いている間」「終わった後」の3つの時点で見る仕組みが必要です。

第一に、受ける前に「これを下回ったら受けない」という下限の価格を決めておくことです。値引きの要請は、商談の場で即答を求められることが多いものです。そのときに判断の物差しがなければ、受注を優先して応じてしまいます。案件にかかる直接の原価に、事務所の家賃や管理部門の人件費など会社全体の固定費の負担分を加え、「ここまでなら下げられる」という線を事前に持っておく。固定費の考え方は「管理会計の始め方」で解説しています。

第二に、受けた後は、案件ごとに予算と実績を比べることです。受注した時点の見込み原価を案件の予算とし、資材費や外注費、人件費の実績を案件ごとに集計して、月に一度は見比べます。資材の値上がりや工期の延びが起きたときに、それが利益をどれだけ削っているかが途中で分かれば、追加の費用を顧客と相談する、次の案件の見積もりに反映するといった手を、終わる前に打てます。予算と実績を比べる月次の型は「はじめての予実管理」で紹介しました。

第三に、終わった案件の採算を振り返り、次の見積もりに返すことです。見積もりと実際の利益の差がどこで生まれたのか——値引きか、資材か、工期か——を案件ごとに記録していくと、自社が利益を失いやすいパターンが見えてきます。その学びを見積もりの前提に反映し続けることで、第一の下限の価格も実態に近づいていきます。

なお、既存の取引先との価格の見直しについては、「物価高倒産が436件——価格交渉を数字で進める3つの準備」で解説しました。案件ごとの採算が見えていれば、その交渉の根拠にもなります。

案件ごとの採算を含む経営管理の現在地は、経営管理体制チェックリスト(約3分・無料)で確認できます。

✔ ポイント

受注競争が厳しいと、「受けなければ売上が落ちる」という焦りから、採算の合わない案件にも手を出しがちです。しかし、赤字の案件は受ければ受けるほど資金を減らします。売上を守るための値引きが、かえって会社を弱らせることがあるのです。大切なのは、受けるかどうかを感覚ではなく数字で判断できる状態をつくることです。下限の価格、案件ごとの予実、終わった案件の振り返り——この3つがそろえば、「断る」という選択肢も、根拠を持って選べるようになります。職人不足や人件費の上昇については、人手不足倒産の記事でも取り上げています。

まとめ

  1. 2026年1〜9月のリフォーム工事業の倒産は96件で、前年同期比20.0%増。1〜9月としては2002年以降で最多
  2. 原因は販売不振と赤字累積で約9割。資材高、職人不足、人件費の上昇に、受注競争での値引きが重なり、「利益なき工事」が増えている
  3. 案件ごとに利益が削られていく様子は、会社全体の月次の数字では見えにくく、気づくのが遅れがち
  4. 備えは、受ける前の下限の価格、受けた後の案件ごとの予実管理、終わった後の振り返り——の3つ

当社のコムレイド経営企画部では、案件ごとの採算が見える管理の仕組みづくりや、受注判断の基準となる数字の整備を、CFO・経営企画のプロが伴走してご支援しています。「忙しいのに利益が残らない理由を、数字で確かめたい」という段階のご相談は、経営管理 無料診断(60分・オンライン)でお気軽にどうぞ。


出典(2026年10月15日閲覧)

執筆:コムレイドコンサルティング合同会社 代表社員 千葉 学(CFO・FP&A支援)

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